05/22 がんばりました？？？

日尾夜 シンさま

相互記念小説書かせていただきました。

希望した頂きました『仲良くお昼寝する彩花と雨丸』　or　『ふとした偶然に彩花と出会った雨丸』で偶然出会う？二人です。

というか一方的に雨丸が彩花発見になっちゃってるんですけどね。

ちなみにこの雨丸には昔の記憶はありません♪
それでは、どうぞ。

お楽しみいただければと思います。

---

相対するということを。

知っている彼と。
知らない彼。

覚えている彼と。
覚えていない彼。

絆を失った彼と。
絆を奪われた彼。

同じだった彼らは。

まったく別々の存在となるしかなかった。










ふとした時。
傍らを通り過ぎた誰か目に止まる。

何故か懐かしいと感じた想いそのままに振り返ると。

漆黒の髪の。
同じくらいの背丈の。
後姿が目に飛び込む。

「待って・・・。置いてかないで・・・・・・」

無意識に落とされた小さな呟きに。
呟いた雨丸自身が何よりも驚いた。

待って？
置いていかないで？

ただ通り過ぎただけの。
まったく見ず知らずの人だというのに。

引き止めてどうするつもりなのだろうか？

でも。

手を伸ばさないといけないと思ってしまう。

その後姿を見ても。
知っている人ではないと分かっているのに。

誰だかわからない。
見ず知らずの人だと分かっているのに。

呼び止めなければと。

失えないものだという想いが膨れ上がる。










駆け足でその後姿を追いかけるのに。

まったく。
捕まえることができない。

見失って立ち止まり。

辺りを見渡し。
その後姿を見つけてはまた追いかけて。

涙の滲むその瞳には。
追いかけているその後姿しか目に入らない。










どんっと何かに体がぶつかる。

ごめんと謝って後を追おうと思っていたのに。

掛けられた声に。
足が止まった。

「雨丸？　どうしたんだよ。んな慌てて」

「班、ちょう・・・？」

偶然か。
それとも必然なのか。

完全に班長に気を取られて。
もう、追いかけていた後姿は全く見えなくなっていた。

「そうだぜ･･････って、おい。雨丸。お前･･････。何で泣いてるんだよ」

「え･･････？」

「え？って。泣いてるのに気付いてなかったのか？」

班長に言われて。
片手を頬に当てると、何かで手が濡れる。

理由も無く溢れてきている涙に。
何が何だか分からなくなってきそうだ。

「すみません。何だか今日は混乱してるみたいで」

「大丈夫なのか？」

「はい。もう帰りますから･･･」

「俺も一緒に帰ってやるよ」

「いえ、せっかくの休日なんですから」

不満そうな班長に、雨丸は軽く笑って告げる。

「・・・・・・すみません。ちょっと一人で考え事がしたいんです」

「そうか。なら良いけど。･･･何かあったら相談しろよ」

「はい。それじゃあ･･････失礼しますね」










邂逅は果たされた。
蓋をされてなおあふれ出したその思いが何を意味するのか。

その時の僕にはまだ分からなかった。

けれど。
確実にそれは何かに触れ。

蓋に。

小さな。

小さな穴を開けた―――。





web拍手を送る