05/01 キリリクで貰っちゃいました♪

七陽の珀華さまにいただきました。



『始まりはイマ此処から』の続き

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「良かったのか、班長？」


「ん？あぁ…、寿か…。来んなっつってただろ」


「本当は雨丸を自分の手元に置いておきたかったんだろ！？」


「…」


密かにずっと隠れて話を聞いていた寿。


彼女は雨丸がいなくなってから、どれだけ王太が必死になって彼を探していたか知っていた。


班のみんなの前ではいつも通りでいて、仕事が終われば雨丸の事だけを心に浮かべて。


王太にとって唯一縋りつけ、甘えられる存在だったから―――。


急にその存在が無くなってしまえば、

雨丸を思い慕う王太が壊れてしまうのではないかと思った。


だから今日だって来るなと言われたのに後をつけて来てしまったのだ。


「アイツにはアイツの幸せがあって、それをオレがとやかく言う権利なんてない…。それに…」


「それに？」


「ちゃんと笑ってたろ、アイツ？」


そう言って王太は空を仰いだ。


春特有の、霞がかかったみたいにぼんやりした空は、

すごく広大で綺麗だった。


―――――――――


「彩花っ！」


背にゆったりと流れる長い髪を、左右に揺らし歩いていた彩花が足を止めた。


聞こえてはいけない声が聞こえた気がして、

自分の耳を疑った。


“返した筈のモノ”


それは彩花にとって命にもかえがたい大切な、大切なモノ―――…


耳を澄ませばその大切で愛おしい存在が、幻とかじゃなくて本当にすぐ近くにいるんだと分かった。


「めぇ…」


後ろに振り向けば、やっと見つけた！と息を切らせながら笑う雨丸がいて、


気が付けば、ギュッと腕いっぱいに力を入れて抱き締めていた。


「めぇ…めぇ、めぇ」


「辛い思いさせちゃったね…」


雨丸は優しく髪をすくように撫でて、額にキスをした。


「彩花、オレはちゃんと約束したよね？ずっと一緒にいようって」


「でも…めぇとボクはあまりにも違いすぎる…。めぇが縁にいれば、きっとこの先後悔する」


生まれる前からフタリが当たり前だったボク等。


心も体も繋がっていた。


なのに――…


あの日ボク等は離れてしまったんだ。


痛かった。


痛くて、いたくて、イタクテ……――


何がこんなにイタイのか分からなかった。


きっと繋がっていたものが全て切り放されてしまったから。


一本しかなかった道が、二本になり三本になり………


数えきれないぐらいの道が出来て、


ボクを忘れた君が選んだのは、丁度１８０度反対の道。


光があり、温かくて綺麗な―――、

まるで君みたいな感じの道だ。


「…ない…」


「え？」


「オレは後悔なんてしない！だってオレが決めたことなんだから」


真っ直ぐにボクだけを捕えている雨丸の瞳。

「オレには彩花が何を考えているのか分かるよ？だってオレ達は繋がっているんだから」


「繋がって…？」


「オレは彩花を見つけたよ。ここにいるんだって分かったよ」


繋がっているのは体とか心とかじゃなくて、

もっともっと深くて言葉なんてものには表せないもの。


「ボクは…めぇの側にいていいの？」


離れたくない―…


でも雨丸には、いつも笑っていられる、そんな幸せな場所にいてほしい。


「彩花は言ってくれたよね？」


「ボクが…めぇに…？」


「うん。オレを守るよって…。でもね、それじゃあダメなんだ」


強い意思が、空気の振動で伝わる音のように自然に伝わってくる。


「守ってもらってばかりじゃダメなんだ。だからオレも彩花を守るよ。彩花も縁の人達もみんな守るよ」


「めぇ…」


「オレのやり方でみんなを幸せにする」


オレの精一杯は伝わってるのかな？


今はこんな事ぐらいしか言えないけど、でも必ずやってみせるから。


だから君はオレの隣にいて――、


君のだけの幸せを見付け出して。


―――――――――


「帰ろう、彩花」


来た時と同じように手を繋いで、歩いて来た道を戻る。


「…めぇ、縁に帰ったらプリクラ機を一台買わない？」


「どうして…？」


「だってみんなで写真が撮れるから愉しいでしょ？」


首を傾げ、笑顔を向けて聞いてくる彩花。


「うん、そうだね！きっとみんな、今日の彩花みたいに喜んで遊ぶんだろうね？」


幸せと言うものはそんなに遠くにはないのかも知れない。


こうしてオレの幸せが、すぐ隣にあるように―――…end 





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