04/10 相互記念に頂いちゃいました♪

王の祝福の青柳さまにいただきました。

相互記念にリクエストをさせていただきました『【まずは初めましての挨拶を】【それは君の願いか僕の願いか】【それが僕らの真実だった】の続き』でお願いしまして、【まずは初めましての挨拶を】の続きを書いてくださいました。

従順な雨丸から逆転一気に真っ黒なめぇが出てきます。

黒い雨丸って良いですよねぇ。
おじい様を意図も簡単に倒してしまうめぇが良い感じで。

彩花とこれからWSに仕返しをしにいくんですよねｖ　青柳様ｖｖ

ありがとうございますｖ
大切にupさせていただきますね♪

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《注意》
・人が死ぬ表現があるので、苦手な方はお気をつけください。
・読んでいなくても平気ですが『まずは初めましての挨拶を』の続きとなっております。
以上がよろしい方はどうぞ。







「雨丸。これをあげよう」

「なぁに？　コレ」

「雨丸がこの家に来た、私からのお祝いの首飾りだ。・・・・・・お守り代わりにずっと、身につけていてくれるかい？」

「ずっと？」

「・・・・・・そうだ」

「わかった！　ありがとうおじいさま」


ニコリ、と微笑む雨丸。
嬉しそうに首飾りを付ける姿は、幼い子供そのもので。

一体誰が。こんな子供が人を殺すことなど厭わない殺戮人形として育てられていたと思うだろうか。

でも間違いなくこの子供は、その綺麗な白い手を血で紅く染めたことがあり。
その辺りの大人など、太刀打ちできない実力を持っているのだ。


けれども、今。この子供は自分が人を殺したことがあるなど覚えてはいない。


だから、もう大丈夫だとは信じたい。


このまま普通に生きていけば、人を殺す等の出来事は、決して体験することは無い出来事。
今からでも、他の子供と同じように生きていけると思いたい。


信じたい、のだが―――。



「おじいさま、これでいいの？」



雨丸の声に、意識が戻る。

雨丸を見ると首もとに先程渡した首飾りがキラリと輝いていた。


「ああ・・・！ よく似合っているぞ雨丸！　さすが私の孫だ！！」


頭を撫でてほめると、雨丸は照れ臭そうに「えへへ・・・」と笑った。



その純真な笑顔に、ズキリと罪悪感を感じる。



けれども。
これも雨丸のためなのだと。



心を押し殺して、見ないふりをした。







【祝いの首飾り】







雨丸が特務課に入ったと聞いて、急いで雨丸のもとに向かった。

ＷＳに入りたいと言われた時も、普通部だと言ったから許したのに。
まさか、特務課になっているとは思わなかった。


特務課という世界は、雨丸にとって危険な世界なのだ。
普通部以上に危険が付き纏うというのもあるが、もし、記憶を思い出すようなことがあれば―――。





でも。





「―――王太班長のパートナーです」



はっきりと、雨丸が口にした言葉に。



ああ―――もう、雨丸は大丈夫なのだと感じた。



雨丸には、過去よりも大切な現在を手にしていて。
わたしが心配する必要などなかったのだ。



きっと、あれも。
もう・・・必要無いのだろう。



「雨丸」

「何ですか？　おじいさま」

「そろそろ、その首飾りもお前には必要の無いものだろう」

「え、でもこれは・・・」

「また、新しい首飾りをプレゼントしよう」



雨丸が戸惑う様子を見せたが、その首飾りを雨丸から外すと決めた以上、はやく外してやりたかった。



「さあ、取ったぞ」



首に何もかかっていないことに違和感があるのか、雨丸は首元に右手を当てたまま黙っている。

こちらの勝手で行動して可哀想だとは思うが、こんなものが雨丸の首にあるのはもう耐えられなかったのだ。

雨丸には黙っていたが、この首飾りはただの首飾りではない。



スイッチ一つで、爆発する爆弾。



万が一のために、つけていた保険。


つけると決めたのは私だが、嬉しそうな笑顔で迎えてくれるたびに首元から覗くこの首飾りを見るたび、苦しくて仕方が無かった。


でも・・・・・・それももう、終わ―――――。






「・・・は、ははっ！　あはははははっ！！」






突然。
雨丸がお腹を押さえて笑い出した。




笑わずにはいられないようなその笑いは、一種狂気めいたもので。

傍にいたおじいさまや寿だけでなく、少し離れたところに立っていた西野も驚いたように雨丸を見つめた。



「外した・・・ってことは、ボクのことを信用したってことだよね？」



どこか、雨丸の口調が幼い。

何が起こっているのかまだ理解していないもの一人、理解しようとしない者二人を、雨丸は笑いすぎたために溢れ出た涙を拭いながら見渡した。
そして「ああ・・・」と微笑みながら、理解していない一人である寿の前にゆっくりと近づく。


「さ、さめ・・・まる？　一体どう」


『したんだ？』と、雨丸の様子に心配している寿が語る前に。
雨丸は至近距離から右手の拳を寿の腹にめり込ませた。


「ッは・・・！」


戦闘力は高くとも、寿の身体は発達途中の１０歳の子供にしか過ぎない。
まるで内部を抉られたかのような感覚に、寿がその場に崩れ落ちた。


意識を失わないのは、さすがというべきだろうか。


「・・・・・・ッ、さ・・・め・・・っ！」


肋骨が折れて内部の臓器が傷ついてしまったのか。
雨丸の名前を呼ぼうとする寿の口から、紅い血がドポリと流れ落ちた。



「ああ、寿。ごめんね？　そのままそこで大人しくしてくれればそれ以上何もしないから」



・・・これは誰だ？



容姿や声は雨丸そのものだが、表情や言葉はいつもの雨丸と全く違う。


『寿！　大丈夫！？』


以前、かすり傷で心配してくていた雨丸が、寿の頭を過ぎる。
かすり傷だから大丈夫だといっているにも関わらず、ばい菌が入っては大変だと、雨丸が常備しているバンソーコーを張ってもらった。

思い出せるのは全て、優しくて暖かい、大好きな雨丸の笑顔。


けれども今、寿の眼に映る雨丸は、まるで自分には興味が無いと言いたげな無表情で。
傍に落ちている自分のパンダを拾っているのが見えた。



「これはちょっと困るから、壊させてもらうね」



寿の大好きな笑顔を向けて。


雨丸は、パンダの頭についている丸い機械―――制御装置を、無理やりパンダから引き剥がし。
手からこぼれ落として、簡単に踏み割った。


バリンッ！　と、鈍い音を立てて、バラバラに分かれる寿の制御装置。



身体は動かないけれども、目の前に転がる粉々になった制御装置に―――寿が無言で涙を零した。



涙を流す寿に、何も感じたりはしないのか。
雨丸は、もう用はないとばかりに寿の前から動き出し、清十郎の元へと歩き出す。



「清十郎様！！」



叫びと共に、現役から引いた身とは思えない速さで雨丸に向かってきたのは、離れたところで自分達を見守っていた西野。

けれども、清十郎に勝った雨丸に、西野が勝てるはずもなく。
あっさりと雨丸に右腕を取られ、本来曲がる方向とは逆の方向に曲げられ、右腕を壊された。


「・・・ッまだです！！」


右腕がたとえ動かなくなろうとも、まだ身体は動くし、戦える。
予想はしていたけれども、現実として受け止められていない清十郎をチラリと見た西野は、雨丸を清十郎に近づけてはいけないと判断した。

右腕から脳へと向かってズキリと痛むのを必死に耐えて、雨丸に向かって左手に持った銃を向ける。


「へぇ、そんなものまで常備してたんだね」


感心するような雨丸の声。
撃たなければ殺られるということは頭では理解しているにも関わらず。


自分が向けている人物は、自分が幼い頃から見守ってきた雨丸という事実に、西野は一瞬躊躇ってしまった。



「敵に、情も何もありませんよ」



西野の一瞬の躊躇いに気付いた雨丸が、銃を下から蹴り飛ばす。
雨丸の蹴りに握力の弱った左手が耐えられる筈もなく、引き金にかけていた人差し指を傷つけながら、銃は真上に飛んだ。

思わず、銃を眼で追ってしまい。
「しまった！」と、西野が雨丸を見た時はすでに遅かった。


自分の側面を狙う軌道の蹴り。

さきほど、晴十郎との戦いの時に、雨丸がフェイクとして使っていた技。

けれども、右腕は使えず、左腕もままならない西野に雨丸がフェイクを使う意味など無い。



「この技、結構気に入ってるんだ」



金剛燕弾！！



ノーガードだった西野に、まともに技が決まる。

脳を強く揺さぶられた西野は、そのまま意識を失った。



「ＷＳで学んで唯一嬉しかったモノかな。この技」



ってことは朧さんに感謝しなくちゃならないってこだよね？と、独り事のように話している雨丸の元に、上から銃が落ちてきた。
それは、先ほど雨丸が蹴り上げた西野の銃。
その場から動くことなく落ちてきた銃を手に取る雨丸は、まるで全てが計算どおりに見える。


清十郎が雨丸を静かに見つめる中、雨丸は銃に興味を示しているようで、銃を見て「あ、結構古い・・・」と呟き。
面白そうに、銃を気を失って倒れている西野に向けた。


「どうしようかな・・・西野さん。ＷＳじゃないけど・・・この人、おじいさまと一緒になってボクに爆弾つけたんだよね？」


『爆弾』という言葉に、清十郎が血の気が引いた顔で雨丸を見つめる。



「き、づいて・・・いたのか・・・・・・」



清十郎の言葉に、雨丸から楽しそうな表情が消え、何を考えているのかわからないほどの無表情になった。


「・・・彩花が教えてくれた」

「あや、花・・・だと？　まさか、いつ・・・！　いつ、彩花と出会ったんだ！！？」

「出会ったのはＷＳに入る事が決まった時。でも、お話したのは・・・９年前の３月１４日。ねえ、覚えてる？　おじいさまがプレゼントしてくれたテディーベア」

「まさか、あのヌイグルミは・・・」

「そう。彩花がボクのために頑張ってくれたんだって。・・・でも、ボクが全部の記憶を思い出したのは、彩花と直接出会ってから少し後なんだ・・・」


無表情になったかと思えば、ヌイグルミの話を笑顔で話し出し、そしてすぐに悲しそうな表情をした。
コロコロ表情が変わる姿は、まるでこの家に初めて来た時の姿と被る。

でも、今まで清十郎は、こんなに悲しそうな雨丸の表情を見たことが無かった。



「きっと、たくさん傷つけた。彩花はボクのことを覚えて、探し出してくれたのに・・・ボクは彩花のことを忘れていて、きっとたくさん傷つけた」




―――――これも全部、周りのせいだよね。




「止めろ！　雨丸！！」






ドンッ・・・！！






清十郎の声も虚しく。


―――鈍い銃声音が響き渡った。


建物内に、音の名残の反響音が小さく耳を通る中。
ゆっくりと、紅い血が床に広がっていくのが清十郎の瞳に映る。


「西野・・・！！」


名前を呼んでも、答えるはずが無く。
ただ動くのは、血の流れのみ。





呆然と立ち尽くしていると―――無音にも等しい空間になっていた建物の中に、パタパタと音を立て、一羽の鳥が入ってきた。




その鳥は、決して生きている鳥ではなく。清十郎が、雨丸の見張りの一つとして建物の外に飛ばしている機械の鳥。

建物には決して入ってくる事がないプログラムになっているはずにも関わらず。
現に建物内で羽ばたいている、何かを加えているらしきその鳥は、雨丸の伸ばした右手に降り立った。


「あれ、見てたんだ？」


雨丸が鳥に向かって話しかける。

鳥は、加えていたモノを雨丸に渡して、先ほどの問いかけに肯定するかのように鳴き。


そしてすぐに、パタパタと音を立てて、飛び立った。



先ほど鳥が加えて、雨丸に渡したのは―――。




「ねえ、これおじいさまに似合うと思わない？」




清十郎が雨丸にあげた首飾りと似たような首飾り。
若干デザインは違うものの、清十郎にはそれが『何か』解った。



「おじいさまがボクにプレゼントしてくれた首飾りはね、彩花達が解除しちゃって使えなくなっちゃってるんだ。だから、今度はボクがおじいさまにプレゼントするね」



楽しそうな笑顔でゆっくりと近づき、懸命に手を伸ばして、清十郎の首に首飾りをつける。
抵抗できる力はまだ残っているはずにも関わらず、清十郎は抵抗する事も逃げることもせず、甘んじてその行動を受け入れていた。


「あ、できた！　よく似合うよ。ボクと彩花がおじいさまのために選んだんだー、ねえ、気に入ってくれた？」

「・・・・・・・・・ああ・・・」

「良かったー。この首飾りは、ボクのことをおじいさまが信用してくれた時に渡そうって決めてたんだよ？」


雨丸から首飾りが外された時、それは清十郎が雨丸のことを大丈夫だと信用した時でもある。
だから、爆弾を解除したといっても不快な存在である首飾りを雨丸はずっと身につけていたのだ。





「今日は素敵な日だね！　ボクがおじいさまに信用された日で、ボクが彩花の元に帰れる日。・・・あ、西野さんの命日でもあるね」





―――――ボクと彩花がスイッチを押す時まで、解除なんていうツマラナイ事をして死なないでね？　おじいさま。





おじいさまの首元で、祝いの首飾りが涙の雫を浴びながらキラリと輝いた。



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